艶春特別開帳・都築響一コレクション 秘蝋の宴 満珍全席 12/01/06 - 01/22



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『艶春特別開帳・都築響一コレクション 秘蝋の宴 満珍全席』

http://www.vanilla-gallery.com/archives/2012/20120106.html

12/01/06 - 01/22  入場料:1.000円(お土産付)

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密蠟 ―― Waxed Obsession

 君は蝋人形に、手を触れてみたことがあるだろうか。あのつかみどころのない滑らかな肌が、触っているうちに掌の体温で温められ、しっとりと汗ばむように指に吸いついてくる、あの指先の官能を体験したことがあるだろうか。

 言うまでもないが、蝋人形は似ていなくては話にならない。姿かたちはもちろん、表情から皺の寄りぐあいから、皮膚のざらつきや産毛の生えぐあいまで、蝋人形師はみずからの作品を「原型」のできるかぎり忠実な再現とすべく心血を注ぐ。異なる種類の蝋を混ぜて肌の張りを表現し、一本一本人毛を植え、血管の色に染めた蝋の管を皮膚の下に埋め込む。そうした気の遠くなるような作業はほとんど、蝋にいのちを吹き込むことにほかならない。

 いま目の前に、不可思議としか表現しようのない蝋人形のコレクションがある。マダム・タッソーをはじめとする世界各地の蝋人形館を見てもわかるように、ふつう蝋人形とは歴史上の人物や現代の有名人をかたどって作られるものだが、ここに並べられているのはひとりのはだかの女、そして臍から太股までしかない、局部だけの全28体にのぼる「蝋製の人体標本」である。それも医学標本とちがい、ある患者の症例を正確に再現しようとして作られたものでさえない。これらはすべて、ひとりの老人の奇態な妄想が、現代最高の技術を持つ蝋人形師と出会って生まれた、いわば蝋のカタマリというかたちをとった、激しくも狂おしいイマジネーションなのだ。

 既存のなにかに、だれかに似せるという蝋人形本来の指命を離れ、ただ黒く華咲く想像力にのみ忠実にかたちづくられた、異様な迫力の性器たち。腰の大きさは通常の等身大なのに、黒々と勃起する男根群は通常のサイズをはるかに超え(ていると信じたい)、女性器もまた性交直後のように膣口を開ききり、ぬめぬめとうごめくかのようだ。

 ひとつだけ断っておきたいのは、多くのアウトサイダー・アートの例と同じく、この前代未聞のコレクションはあくまでもひとりの人間が、自分だけのために蝋人形師に作らせ、自分ひとりで鑑賞し、愛でていたものであって、どのようなかたちであっても公開され世に出るとは、想像だにしていなかったということである。北九州の片隅の、蔵の奥深くに眠っていたコレクションが、主の逝去にともなう不思議な縁で、こうして人々の眼にほんのひとときだけ触れることとなった。

 発注した本人の思惑をはるかに超えたところで、異形の芸術作品へと昇華した性器たち。それらは僕らの目の前に一瞬、毒々しいまでの鮮やかさでよみがえり、そしてまもなく、また木箱に詰められてどこかの倉庫の奥で、ふたたび深い眠りにつくはずだ。

(都築響一)

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at : ヴァニラ画廊
東京都中央区銀座6-10-10 第2蒲田ビル4階
tel.03-5568-1233
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・18歳未満入場不可






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